小黒部谷調査
今、小黒部谷には4基の砂防ダム建設計画が存在し1号は完成、2号の建設の初期工事が行われています。今回の調査で支流も含めイワナがいないことが分かりました。ただし、工事現場周辺には人が放流したとかで大きくなったイワナが釣れたそうでした。しかし、途中にイワナ止めがあるのか三叉までは遡上していませんでした。
イワナがいない理由は幾つか考えられるますが、この谷と黒部川本流との合流点に10mほどの治山ダムが造られており、築後20年ほど経っているているため、大きな土石流で壊滅的な被害を受けて下流に押し流されたイワナが最遡上できなかった可能性があります。実際本流、支流には大きな崩落地が見られます。
そもそも今回の調査は、治山ダムができる30年ほど前、小黒部谷にはイワナが沢山いたという話を聞いていたからでした。今回の調査結果から、川を完全に閉塞させている治山ダムと1号砂防ダムのスリット化改修を進めることで、イワナの完全復活を実現させる事が必要だと感じてます。
イワナがいなくなったもう一つの理由は、上流にあったといわれる鉱山跡の毒液の影響かもしれないということです。もし、そうだとすると30年前に生息していたことと矛盾してしまいます。また工事現場周辺の生息に関しても説明がつかなくなります。
今回の調査ではいずれの谷(支流、本流)にも川虫が生息しており、毒素の影響があるとすれば、川虫の生息を説明しにくくなります。生息できない理由を説明するには、本流からイワナを集め三叉まであげてみることで解明できるようになるかもしれません。いずれにしても、イワナを生かして持ち上げる体力と技術が必要になり、課題が大きいです。
それにしても、小黒部谷とはよく言ったものです。長さが短いだけで景観は黒部そのものであり、谷の美しさがすばらしいです。長い間に浸食されてきた渓谷の美しさを、こんなに短い間に人の手で壊すとはなんとおろかなことをしているのだろうかと思います。
谷の地形を見れば、過去に大きく崩れ、崩れきったところで(表土の移動が止まる時点)再び緑化したところが多くを占めます。このようなサイクルは100年オーダーでありますが、このような事実を読み取れない国の役人の目はどこを向いているのだろうか、と思います。山奥で行われている砂防・治山工事にみなさんも関心を持ってもらいたいものです。
写真1番目:黒部川本流合流点近くの治山ダム 写真2、3、4番目:1号砂防ダム、スリット式だがスリットは途中までで、落差は2mほどあります。 5番目:コンクリート骨材プラントも併設 6番目2号砂防ダム予定地。 7 番目:水量が多く川伝いに歩けませんでしたので、三叉までは踏み跡とヤブ漕ぎで大変な苦労をしました。 8、9番目:三叉と本流、三叉はそう遠くない時期に土石流が出たとみられ、できた沖積錐には若い木々が茂ってます。 10番目:三叉から少し下る小黒部川本流 11番目:本流から分かれ西谷・中谷に少し入った場所で竿を出しましたがあたりはありませんでした。 12~14番目: 西谷・中谷の遡行。水量が多くスリル満点。 15、16番目:涼んでいるヒキガエル、岸壁の花 17、18:折尾谷下流、落差が大きく水量も多く、こちらもなかなかの谷でした。 19、20:三叉から上流小黒部谷本流はまさにイワナ場であったが、魚影は全くありませんでした。 21:黒部川本流のイワナ、本流には沢山のイワナが泳いでいるのが見えます。 22:2号砂防ダム工事概要