三城大門沢(松本市)の治山ダムスリット化改修について
2014年暮れ長野県林務課に三城大門沢(松本市)の治山ダムスリット化改修を断られました。今回再度このスリット化の意味するところを考えてみたいと思います。
治山ダム2基のスリット化改修を6年まえから県と協議してきましたが、去年暮れにやらないと引導を渡された場所の再検証を雪のつく前にやってみました。
右沢は昭和34年の伊勢湾台風当時まではこの小さな沢に沢山のイワナが生息していました。しかし、伊勢湾台風の豪雨の大土石流によって大きな岩石でほぼ埋まってしまい絶滅状態となりました。この沢は30mほど下流で合流しているが、この治山ダムができるまで、沢にはイワナが生息していました。
私たちがこの治山ダムのスリット化改修にこだわったのは、昔から生存していたこの場所のイワナを絶滅から救うためでした。本来イワナがいなければならない流域の自然な地形変化を調べる事で、スリット化改修の意義を再度確認するための調査として位置づけてみたいと思います。
完全に埋まった右沢の土砂の移動状況を沢伝いに見ると、大岩が完全に沢を覆っています。このような状態は標高1500mから1800mくらいまで続き、ほぼ頂上直下まで存在している。かなりの量の岩石が溜まっています。
また、このような岩石が大量に溜まる場合は、崖錐といって山が山頂付近から大きく崩れ落ちて下に押し出し堆積している場合などに生じる現象です(風穴などがそれであり、岩の上にはコケが密集しており、岩の隙間から冷気が出ることで外気が結露しコケの生育に適した状態になります)。
伊勢湾台風はたかだか62年くらい前の話でありますが、このような状態はこれからも続きます。仮に今後大雨が降れば今あるような小さな治山ダムをいくつ造ったとしてもとても制御できるしろものではありません。山のつくりを見れば一目瞭然であり、今の治山ダムの防災効果など殆ど役に立ちません。この辺一帯の地形をしっかり見てもらいたいものです。
イワナの生息できる支流を確保するといういう意味は、大きな自然変化でも生き残る可能性を残すことにつながるということです。ダムなどで沢の連続性を遮る事は致命的になってしまいます。
最後に沢を登りつめたらきれいな景色が待っていました。今年は雪が殆どなく、この時期としては珍しいことででした。