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山腹崩壊による天然ダム

6月3、4日と長野県長野市の裾花川上流本沢の森林管理署建設の治山ダム(鉄骨枠型スリットダム2基)と、県の造った治山ダム魚道の機能状態を調べるために、また造る根拠となった山腹崩壊による天然ダムの状態を調べに行きました。

今回は長野市、上田市、松本市の行政の方々と朝日新聞記者の4人で歩きました。幸いに雪解けも終わって水量が少なく、比較的楽に歩けました。

まず最初に現れる県が造った治山ダムは、本体に開けられた穴が不完全につまり、水が完全に溜まらない状態で魚道は機能していませんでした。2番目写真は魚道出口(取り入れ口)です。もちろん本体の穴も枝などで細かいメッシュ状に詰まっているため、魚は通過できない状態で水が噴き出していました(フィルターを取り付けたかもしれない?)。仮に本体の穴が完全に詰まって、水がオーバーフローした場合でも、このつくりは流木で詰まることは過去の事例から分かっている工法です。そろそろダムのスリット化に移行しないと無駄な税金を使うことになってしまうでしょう。

続いて森林管理署が造ったダムに向かいました。写真4~7番目が流木で詰まった状態です。森林管理署は詰まることはないと言っていましたが、この通りです。もちろん魚の移動は不可能で、また景勝地でもある川の景観は台無しとなってしまっています。

続いてこのダムを造る大きな根拠となった天然ダムに向かいまいした。

写真8番目は下から見た天然ダムの堆積状態、9番目は土砂で完全に埋まった状態で、水の溜まっていたころの堆積した細かい砂礫がはっきり分かります。なお、「この自然湖が決壊したら…」という対策が、治山ダムの建設の根拠でした。

谷を歩けばこのような跡はいたるところに見られるのですが、お役人さんや専門家?は、現場を見ずに上空から見るだけで判断することがまかり通っているのが現状です。納税者を馬鹿にしている典型です。

最後の3枚のようにこの谷は堆積岩(砂岩)を川が削って急峻な岸壁帯が続くため、樹木は根が浅く、自身の重さを支えきれずに時がたてば滑り落ちてしまいます。当然鉄骨枠型のようなダムが詰まることは、現場を歩けばだれでも分かることです。

2日目は濁川の治山状況を見つつ、キャンプをしました。

こちらは1番目の写真が濁川入口から少し上がったところの全景で、コンクリートの見える大きな小山の様な塊がちょうど水芭蕉自然園となっている部分です。この部分は大きな地滑り地帯で、滑った痕にできる池が湿地帯になり、ブナ林と相まって美しい景観を醸し出しています。

1番目の写真のコンクリート部分はボルトを埋め込み滑りを止めようとしている光景です。なおこの沢上下一帯が地滑り帯で、同様な地形は自然園以外でも沢山見られます。これらのすべりの若干をコントロールするためにおおよそ20基ちかい治山ダムがつくられ、当然渓流環境は台無しとなります。

造られた当初は工事作業用の道もあったので歩きやすかったと思われますが、今はふみ跡も分かりにくく、“崩れ”などで遡上しにくく、またダムを乗り越えるのに藪漕ぎで高巻きを強いられる状態です。

ダムが無ければ河床勾配がなく、歩きやすい快適な渓流なのですが…、これでもか、これでもかと次々に出てくるダムには閉口するしかありません。上流には本沢同様自然湖があり治山ダム建設の根拠になっています。

しかし5番目写真のように長野県名勝指定となっている自然景観は、長い長い年月の中で地滑りや山腹崩壊などを繰り返し繰り返し起ることにより、それらを川の流れが押し流したり、削り取ったりしてでき、今の美しい景観となっています。

この自然の継続作用を否定した景勝地保護とは意味のあるものでしょうか。砂防ダムや治山ダムに関して再度考え直す時期に来ているのだと思います。

まあ、せっかく来たのだから楽しもうと、夕飯には自然の恵みをたっぷり頂き、またタニウツギなどの花などを愛で、カジカガエルの鳴き声を聞きながら眠りにつきました。なんと贅沢な調査行でしょうか。

益々闘志が蓄えられた数日でした。


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