長野県環境部から、公開書簡に対する回答が届きました

長野県環境部および長野県企業局に対し、2026年5月8日付けで提出した公開書簡に対する回答書が、長野県環境部ゼロカーボン推進室から、2026年8月25日に届きました。
回答では、小水力発電について、自然環境や生態系の保全、地域住民の安全、地域との調和を前提に、関係法令を適正に運用していくとの考えが示されました。また、流域単位の累積影響評価は実施していないこと、維持流量の遵守や生物調査を一律に第三者が検証する仕組みはないこと、環境モニタリング結果の作成・公表を一律に義務付ける制度はないことが明記されています。
県は、一定規模以上の事業には環境影響評価制度を適用し、それ以外は河川法、砂防法、森林法などに基づく個別の許認可を積み重ねることで、災害リスクの低減や生物多様性の保全につなげるとの考えを示しています。
一方、公開書簡で政策的検討を求めた「源頭部・上流域への新規立地の抑制」「砂防ダムを利用した開発の抑制」「既設砂防ダムのスリット化」「ゾーニング」「流域協議会を活用した合意形成」については、個別の回答はありませんでした。また、鎖川と大白川の具体的な事例や、脱炭素、生物多様性、防災などの政策目的が衝突した場合の判断基準とその公開方法についても、具体的な回答は示されていません。
以下、回答書の全文を掲載します。
令和8年(2026年)8月25日
渓流保護ネットワーク・砂防ダムを考える
田口 康夫 様
長野県環境部長 小林 真人
長野県林務部長 千代 登
長野県建設部長 森下 淳
長野県公営企業管理者 吉沢 正
令和8年5月8日付で郵送いただきました書簡における質問項目について、以下のとおり回答いたします。
なお、県といたしましては、小水力発電をはじめとする再生可能エネルギーについて、自然環境や生態系が保全されるとともに、地域住民の安全が確保されるなど、地域との調和を図った上で推進していくことが必要であると認識しております。そのため、河川法、砂防法、森林法、環境影響評価法、長野県環境影響評価条例、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法等の関係法令の適正な運用に努めてまいります。
記
1.流域単位での累積影響評価
環境影響評価法に基づく環境影響評価は、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業を対象にしており、水力発電に関しては、環境影響評価法において発電容量3万kW以上を第一種事業として対象としているところ、長野県環境影響評価条例では、他の面的開発事業と同様に、法における第一種事業の半分に当たる1.5万kW以上の事業を対象としております。この規模に該当する場合、事業者は環境アセスメントの手続を行うことになります。環境アセスメントでは、事業が環境に与える影響について調査、予測及び評価するとともに、環境保全のための措置を検討し、その結果を事業計画に反映することで、より環境に配慮した事業の実施につなげていくことになります。
また、水力発電においては流域単位での累積影響評価が法令上義務付けられていないことから実施しておりません。
なお、企業局では、これまでに環境影響評価法及び長野県環境影響評価条例の対象となる発電所はありませんが、今後、対象事業を行う場合には同法及び同条例に基づく手続を適切に実施するとともに、植物や魚類、猛禽類等に関する調査結果について、必要に応じて有識者や専門機関の専門的知見も参考にしながら、周辺環境への影響に配慮した計画検討を行ってまいります。
2.環境流量の基準
河川法の許認可においては、「正常流量検討の手引き(案)」(国土交通省河川局)や「水力計画地点流量算定マニュアル」(資源エネルギー庁)等に基づいて流量の検討を行うことを許可申請者に求めています。この中で、動植物の保護、漁業、景観、流水の清潔の保持などを考慮して維持流量を適切に設定することを求めています。
遵守状況を第三者が検証する仕組みはありませんが、取水開始以後は毎年、取水量報告の提出を義務付け、取水状況の確認を行っており、違反した場合は、河川法による監督処分の対象となります。
なお、企業局においても、上記手引き(案)やマニュアル等を踏まえ、動植物の保護や河川環境の保全に必要な流量が維持されるよう取水計画等を設定するとともに、必要に応じて有識者や専門機関の意見も伺いながら、河川環境に配慮した施設整備や運営に努めています。
3.砂防・土砂管理政策との整合
砂防指定地における小水力発電の施設等の設置にあたっては、当該設備の設置により流水を妨げないこと、施設等が安定を欠いたり、耐久性がなく倒壊又は流出して河川の流水を阻害しないこと等を確認し、当該砂防指定地内に存する砂防設備の機能を損なわないものに限定して、砂防法に基づく許認可を行うことで、砂防政策との整合を図っています。
4.政策のバランス
小水力発電設備の設置にあたっては、様々な法益の保護や関係者間の利害調整が必要となることから、河川法、砂防法、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法等、各種法令において必要な許認可や手続きが定められているものと理解しています。
5.情報公開と市民参加
再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法では、事業の実施にあたり、事業者が地域住民へ説明会などを実施し、安全面や自然環境・生活環境を含む「事業の影響と予防措置」について説明することとされ、質疑応答の時間を確保することなども規定されております。なお、環境モニタリング結果の作成・公表を一律に義務付ける制度はありません。
企業局では、同法に基づく認定を受ける場合、同法及び「説明会及び事前周知措置実施ガイドライン」(資源エネルギー庁)に基づく説明会を開催しており、発電所の建設計画段階から周辺地域の皆さまのご意見やご懸念に対応してきておりますが、今後も地域の皆様との対話を重要視してまいります。
6.立地審査の仕組み
砂防法や森林法等の関係法令においては、各法令に基づき指定する区域内における行為
の安全性を確認するために必要な手続きが定められていると認識しており、県では個別案件ごと各法令への適合を確認しています。
砂防指定地における立地及び施設については、崩壊地や土地の変状が生じている場所での行為でないこと、砂防設備の機能に支障を生じさせないものであること等を求めています。
保安林の解除については、指定の理由が消滅したときや公益上の理由により必要が生じたときに限定されています。
なお、企業局の小水力発電所は、土石流危険渓流には設置しておりません。
7.生物多様性調査の客観性
生物調査や環境影響影響評価について一律に第三者が検証する仕組みはございません。
なお、河川法の許認可においては、動植物の生息地又は生育地の状況からの必要流量調査などを実施することが求められており、具体的な調査方法は正常流量検討の手引き(国土交通省)を参考に実施しています。また、地元市町村長や漁業協同組合などの意見書の添付を求め、関係者の同意状況を確認しています。
また、環境影響評価法又は長野県環境評価条例の規模要件に該当する小水力発電事業は、同条例に規定する県環境影響評価技術委員会において、環境影響評価方法書や環境影響評価準備書等の図書について技術的な見地から審議を行う機会があります。
8.許認可制度のあり方
ご提案の評価に類する仕組みとして環境影響評価制度が存在しているものと認識しておおりますが、本制度では、一定規模以上のものを対象としているところです。基準未満の案件に対しては、様々な法益を保護するため、河川法、砂防法、森林法等の各種法令において必要な許認可や手続きが定められているものと理解しています。
河川法の許認可においては、事業者に対して、動植物の保護、漁業、景観などを考慮して維持流量を設定するとともに、治水上問題が生ずることのない設計内容とすることを求めています。
砂防法の許認可においては、小水力発電の設置が砂防設備の機能に支障を生じさないものであること等を求めています。また、水質の汚濁が生じた場合は申請者の責任で対応すること、植生の回復に努めることを許可条件とする場合があります。
森林法の林地開発に係る許認可においては、周辺地域において土砂の流出又は崩壊等の災害を発生させるおそれがないことを許可要件としています。
流域全体の一つ一つの案件に対して、こうした各種許認可を丁寧かつ適切に運用し積み重ねることが、流域全体の災害リスクの低減や生物多様性の保全につながると考えております。
繰り返しとなりますが、県では、小水力発電の推進にあたっては地域との調和を図ることが大前提と考えており、関係法令に基づき、地域の関係者の意向や、環境に与える影響にも配慮しながらゼロカーボンの実現を目指して進めてまいります。
以上




















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